めでたい再発。アーント・サリー - Aunt Sally
今年、いつの間にかアーント・サリーのCDが再発されていた。
レーベルはMesh Key。NYのレーベルらしいが、売っているのはジャックス、ゆらゆら帝国、渚ようこ、など日本のサイケデリック、ロック系がほとんど。
↑ Bandcampでも、故・阿木譲の運営レーベルVanityのBoxセットが売られている。やっぱりVanityの海外での評価は高いのか。
そのなかでも今回のアーント・サリーは国内外含む人気作のはずで、CDで手に入りやすくなったのはよかった。しかもSpotifyなどサブスクリプションでも聴けるようになっている!
昔、いぬん堂というレーベルが戸川純のライナーとかボーナストラックもつけて初CD化していた記憶。これが今では手に入りにくくなっている。
もともとレンタルした音源を聴いていて、阿木さんが亡くなったあと、VANITY BOXというレーベルの全作をリマスターしてCD化したボックスセットを買った。これも500部限定とかだから、伝説的に語られているわりに、アーント・サリーをちゃんと買って聴くチャンスはこれまで少なかったのかもしれない。
INUの『メシ喰うな!』と並ぶ日本のパンク/ニューウェーヴ史に輝く傑作。うるさいだけの過激さとは全然違う、背すじ凍る系というか、氷点下の切れ味系というか。経路は違うけれど、同年代でいうとThis HeatとかJoy Divisionみたいな「冷えた」印象のあるクールなパンクという感じ。
感情を排したように歌うPhewのボーカルと、Bikkeの神経症みたいなフリーキーなギターが格好いい。童謡みたいなのとかロックンロールぽいのとかわりとキャッチーな曲が多いけれど、声と演奏が全然キャッチーじゃないので絶妙なバランスになってる。このあとで坂本龍一とやった<終曲>も好き。
直接的な影響はどうあれ、このアルバムそしてPhewのパフォーマンスが戸川純とか後藤まりことか、もしかしたらやくしまるえつことかあいみょんでさえも?すべてのパンク・フィメールやチェンジメーカーたちにくっきりした轍を残したことは間違いないのだ。あと初音ミクもカバーしている。
そういえば2015,6年くらいに、下北沢のディスクユニオンで、制服姿の女子高生がアーント・サリーのアナログ盤を胸にかかえてレジに並んでいた。そういう普遍性を持っている。
別な話、ギターのBikkeさんはその後ラブジョイというバンドを結成している。
ラブジョイで検索するとAV女優さんが先に出て、こちらはもっと素朴で温かみのある「歌もの」。リマスターで再発された『かけがえのないひととき』がおすすめです。