あぶらだこ OK盤

あぶらだこのインディーズ時代初期音源を集めたコンピ。1stソノシート(1983.8)、オムニバス『グレートパンクヒッツ』(1983.12)収録曲、12インチ(1984.9)、ライブテイク(1984.1~4)を4曲。

前は、ボーナストラックを追加した「ADK盤」を持っていた。曲数はADK盤のほうが多いけど、OK盤は川上哲之(ex:人民オリンピックショー、突然ダンボール?)、勝井智子(初代マネージャー)、石井孝浩(フールズメイト)といった人たちのライナーノーツが収められている。写真もいろいろ載っている。資料的な価値はOK盤のほうが高いかもしれない。

 

OK盤収録の音源では、変則リズムや超絶技巧はまだ影を潜めていて、全体的な印象としては衝動的なハードコア・パンクといったおもむき。

それでも、1985年の『木盤』以降にそのまま通じるような、激しい転換、緩急、リズムの変化をともなった構成が十分楽しめる。

このときのドラマーはラフィンノーズに加入するマル。崩れ落ちるような高速ドラミングも、断末魔を思わせるような余韻を残す音色も、素晴らしい!

というか"原爆"とか"クリスタル・ナハト"とか"OUT OF THE BODY"とか聞くと、この過激な緩急を支えるドラムってどんだけ上手いんだと思わされる。直接、作曲に関わってなくても、あぶらだこサウンドの立役者は マル→吉田達也→伊藤健一 と受け継がれてきたスーパードラマーたちだったのかもしれない。

 

空間の外で天使となる全力全開 "Agape"の父
流浪う事に疲れた騎馬 砂漠の太陽天才詩人
信じるのは LOGOS
死んだのは LOGOS
(LOGOS)

衒学的な世界観と、それに相入れないような、唐突ですっとぼけた言葉。

辛抱するでござる、ニン、ニン
(忍耐)

たまにじんわり滲みる叙情が混ざる。

赤い丘の上の橋を渡り
近親相姦を企らみながら
何も無い昨日に向かって 泣いている
蜃気楼の眩しさに疑惑を覚え
死への幸福へ 知をかける
全ては何も無い 全ては自然に帰る
OUT OF THE BODY
(OUT OF THE BODY)

現実離れした言葉がフランケンシュタインのようにいびつに縫い合わされる。

 

語彙は、知っている単語の多さよりも、その接合の仕方、文法をいかにアクロバティックに駆使するかというところで問われる。

 

この3つのバランスが絶妙にあわさった詩の凄みでいうと……。『木盤』がいちばんかも。

 

木盤 (SHMCD)

木盤 (SHMCD)

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