今にもぬるまっていくHot Riverside にて

 

特急踊り子号。

川端康成スタイロの名前を冠した電車で、待望の「熱川バナナワニ園」へ行った。

今の自分には、チラ見えする踊り子の官能よりも、山のふもとにひっそりと息づくワニとバナナの共演のほうが文学的に思えてしまう。

突発的な弾丸旅行だった。夜に用事を控えた友人とともに、東京を朝早く出発した。

 

観光地の熱海を抜け、さらに1時間ほど海沿いを走った先に熱川がある。

駅を挟んで、山と海がある自然的な土地だ。山側に1分も歩けばバナナワニ園に着き、海側に行くと海水浴場と温泉街が広がる。

まずはバナナワニ園へ。

詳細を書くとキリがないが、DOPEとしか言いようのない時空間だった。

東京にあるような、いかにも戦略的にDOPEを狙った紛い物とは違う。年月の蓄積を経て時代に取り残されたもの、そしてわずかずつアサッテの方向にアップデートされていったもの、そこにひとしずくのマトモなPOPさが混在した、真にDOPEな空間だった。

ワニは本当に良かった。直射日光を受けて天日干しになり、だらしなく四肢を投げ出して眠っているやつばっかりだったけど。

たまに仲間の頭を踏みつけて寝返りをうったり、踏まれたやつも意に介さなかったり、酸素を補給するために鼻先だけ水面から出してプクプクと気泡を出してまた沈んでいったり、スローモーションみたいな速度でじわじわとアクビをしていく様子を見ながら「こういう生き物になりたい」とぼんやり思った。

 

自分の動物観がうまく説明できない。

ペットショップが苦手なのはなぜだろう。動物園くらいの広さで(それでもワニは窮屈そうだったけど)、エサや環境を保証しているのなら、楽しむことができる。(それとも、言い方は悪いけど"見世物"と割り切っているから?)

ペットショップは、あの小さなゲージの中で、明らかに居心地の悪そうな顔をしている彼らを見るのが耐えられない。しかもそれを見る人間たちが、ほんとうに無邪気に「かわいいね」とか言っていたりして、それでいいのか、と漠然と思ってしまう。人の楽しみに水を差すようなことは言いたくないけれど。。

もう他界したけれど、14,5年、猫を飼っていた。母親より長く生活をともにしたことになる。

私は飼いたくて飼った、正確には保健所に引き取られそうになっていたところを拾った形になるわけだが、「猫のほうから飼ってくれと頼んだわけじゃなくて、自分の欲望で飼ってるんだから、ちゃんと世話をしなくちゃいけない」、、、、というようなことを子供心に思っていた。

父親は「何言ってんだ、保健所で殺されそうになったところを助けてやったんだから、うちは命の恩人じゃないか」と言っていたけれど、やっぱりそれも人間の理屈だと思う。保健所を作ったのも人間だし。

人間の理屈で動物を理解するのは動物に失礼だと思う、だからNHKの"ダーウィンが来た!"みたいに、動物のしぐさに人間がアテレコするのも子供のころから疑問に思っていた。

(こんなことばっか書いてるとまためんどくさいやつだと思われる。。。)

だから私は、ちゃんと世話をしようと思った。

学生時代、長い時間をかけて実家から大学に通っていたのも、猫の世話をする責任を感じていたからかもしれない。いや、大部分は金銭的な都合だったけど。家を出た後で、父親が1人で猫の世話をまっとうできるとは、どうしても思えなかった。

結局、働き始めて家を出てから、4ヶ月ほどで他界するんだけど。。。自分が果たして良い飼い主だったのかと、ふと思うことがあった。。

 

熱海の話はどこいったんだ?

だめだめ、楽しい話をしなくちゃ。

で、バナナワニ園は最高だった。

ワニ以外でいうと、植物園になぜか現れる石膏型の天使像の集団とか、さまざまな睡蓮の葉が浮かんでいる池にエリック・サティみたいなアンビエントが流れているところとか、なんともいえない味があった。

 

さて、バナナワニ園を堪能して駅の反対側に行くと、誰でも入れる足湯があった。

少し足を休めてから、海でとれたての鮮度抜群の海鮮丼を食べ、腹ごしらえもした。

幸先の良いスタートだ。

東京に戻るまでにはまだ数時間ある。明朝から活動することで、休日はこんなにも長くなるんだ。

せっかく熱川に来たんだから、温泉に入りたい。温泉宿はたくさんあるが、日帰りで入れるところはあるんだろうか。

駅近くの観光案内所に尋ねると、日帰りで入れる温泉の一覧表をもらえた。だいたい夕方くらいから開くところが多く、その中で今すぐ入れそうな温泉をピックアップして、一番近い場所にあるところに行ってみることにした。道中の先には海があるから、観光するのにもちょうどいい。

 

行ってみると目当ての温泉が閉鎖されていて爆笑した。

観光案内所に言われた場所が閉まってるんだから、もうどうしようもない。

とりあえず海を見に行く。

ギンギンに晴れた真夏の空の下、海はきらきら光っていて確かに綺麗だった。

風の強い日で、わりと重たく響き渡る波の音も、テンションを上げてくれた。

海水浴場のスピーカーから鳴る、ローファイすぎるdef techもDOPEポイントだ。

 

さて、海を眺め終わるとやることがなくなってしまった。

16:00くらいには駅を経たなければいけないので、もうそれほど時間もない。

それに外は暑く、急勾配の坂が多いこの街では、散策を続けるのも辛くなってきた。

もういいから適当な喫茶店でも見つけて涼もうと、googleで検索してヒットした喫茶店に向かった。道中、大きな看板も出ていて、迷うことはなかった。

 

着いてみると目当ての喫茶店が廃墟と化していて爆笑した。

 

笑いを通り越して若干引き気味になってきた。

よくよく見ると乱立するホテルやペンションもあまりに閑散としていて、潮風を浴びまくったせいで錆びついた箇所がいくつも見られる。

バブル期か、いつの頃か知らないけれど、かつてあったであろう夏休みの喧騒がまったく感じられず、現地の人の歩く姿もなく、ただただ過去の歴史を風化させながら、来るでもない終わりの時を待つプチ廃墟のオンパレードとなっていることに気づく。

賑わいも底をついた観光地の雰囲気は、DOPEという言葉も飛び越え、ひたすら郷愁を感じさせる。

 

これはこれでなかなかない体験だし、ある意味とても楽しかった。

けれどもう何年かは決して来ることもないだろうと思った。

温泉、海は、基本的に熱海で十分だ。

 

つまり熱川とはバナナワニ園のことを指す地名であったし、バナナワニ園とは熱川の名をかろうじて守り続ける唯一のバトルフィールドだったんだ。。。

 

↓ちなみにバナナワニ園のサイト。

意外とリッチなサイトで、熱川の"本気度"が伝わってくる。

7月末にマスコットキャラクターの名前が決定していたり、声優とコラボイベントをしていたりと、まだまだ未来に向けた活動が止む気配はない。

がんばれ!バナナワニ園

bananawani.jp