まんがか ふたり
今年の8月、三好銀さんが亡くなってしまったのを知って茫然としていたのもつかのま、不幸な事故による小路啓之さんの訃報を聞いたのが今月のこと。
ショックだ。
物語の筋書きとは別のところで、なにげなしに描いた背景や、道具や、マクガフィンや小動物や通行人などさまざまな余剰のイラストが、魅力的なオブジェとなっていく、とても稀有な才能だったと思う。
ここ2年くらい小路啓之さんの新作を追うことはなかったけど、映画館で『秘密 The Top Secret』をなぜか観ていたとき、ふと『ラブリー』という短編を思い出した。
『秘密』は、原作の漫画のことはあまり知らないけど、残念なことに、ひどい映画だった。自分のセンスを賭けて、ひどいと断言したい。俳優の演技がせっかく迫力を増すにつれて、シラジラと物語との距離感が生まれていくような、弱さがあった。
たくさんの金をかけて、能力のあるひとたちが集まって、どうしてこういう出来になるのか、ほんとうにわからない。たぶん誰かが悪いわけではなく構造の問題なんだろう。
「脳のデータベースを使って他者の記憶を見る」という装置が出てくるので、小路啓之の『ラブリー』を思い出した。こちらは短編にもかかわらず(映画とまんがを比べてもしょうがないけれど)一切無駄のない書きこみと展開力で読者を没入させ、マジで涙を抑えきれないラストに突き落とす、傑作だと思う。
映画を観ながら「あれをもう一度読みたいなー」と思っていた。